有病者歯科
有病者歯科

持病のある方は、病気の種類や重症度だけではなく、麻酔注射や治療への不安感も体調に影響します。少し治療時間はかかっても、できるだけリラックスして治療を受けていただけるよう配慮しています。
有病者歯科とは、高血圧症、糖尿病、心疾患や脳梗塞などの全身疾患を有する方を対象に行う歯科治療のことです。中高年以降の方は、生活習慣病をはじめとする内科疾患を患っていることが多く、また超高齢化社会を迎え、何らかの基礎疾患(持病)をお持ちのご高齢の方も急増しています。こうしたいわゆる有病者の方では、その疾患のために十分な歯科治療を受けることができず、お口の健康が損なわれているケースが少なくありません。病気にかかっている方が安心して適切な歯科診療を受けることができる有病者歯科は、高齢化が急速に進む日本において、その重要度が増しています。
当院では、身体に病気のある方の治療を始める前に、疾患や身体の状態を把握いたします。治療中は全身状態を各種モニターで常にチェックすることで、安全に歯科治療を受けていただけるよう医学的管理を行っています。緊急時には基幹病院との連携を図るだけでなく、AED(自動体外式除細動器)、救急薬品、救急蘇生用医療器材を常備し、万が一の事態に備えた医療体制を整えています。
また、かかりつけの病院と連絡を取り、治療のリスクをきちんと判断した上で治療を行っています。
「持病があるから歯科治療ができない」とお考えの方、持病があり、歯科治療を受けることに不安がある方は気軽にご相談ください。
健康な方でも「歯の治療は痛くて恐い」というイメージをもたれていることが多いのではないでしょうか。この「痛くて怖い」というイメージは、病気をお持ちの方やご高齢の方などでは、なおさら強くなります。場合によってはむし歯や歯周病が全身疾患を進行させてしまうことさえあります。このような方に治療内容や使用する器材・薬剤などを工夫して、より安全に歯科治療を行うのが有病者歯科です。
歯科治療には患者さんが想像している以上に、全身に負担をかける処置が多くあります。全身状態を把握せずに歯科治療を行えば、思わぬ重大な事態を引き起こす可能性があるため、歯科医師はこのことを十分認識し、あらゆる事態を想定して、予防する責任があります。また、予測できない事態にも適切に対処できなければなりません。
超高齢化社会に突入した現代において、ご高齢の方の多くに有病者がおられ歯科を受診されています。病気を知らずして歯科治療を行うことはできず、有病者歯科は時代の要請ともいえるでしょう。
一昔前は、内科疾患を有する方への麻酔を必要とする歯科治療は、危険を伴うという理由から、必要最小限にとどめる傾向がありました。しかし近年においては積極的に治療する方向に変化しています。その背景には、医療機器や医療技術の進歩(監視モニターなどの開発)により、リスクを抑えながら治療ができるようになったことや、歯科疾患と全身疾患(糖尿病、嚥下性肺炎、心内膜炎など)との関連性が解明されてきたことなどがあります。
有病者に対するQOL(生活の質)の向上といったニーズが高まってきたことも大きな要因です。お口は、食事のために使うだけではなく、会話や意思表示などにも不可欠であり、笑うことや歌うこと、愛情を表現するといった人とのコミュニケーションにも深く関わっています。生涯にわたって豊かな人生を送るためにお口の機能を維持することは、高齢化社会における歯科医療の大きな役割といえます。
全身状態の評価
歯科治療を開始する前に全身状態や疾患の程度を把握し、治療計画を立てます。
必要に応じ、かかりつけの医師に問い合わせを行い、病気の種類や重症度、現在服用している薬などについて情報提供を受けます。この情報連携は、抜歯などの侵襲の高い処置がどこまで行えるかを評価する際にとても重要です。
治療中のモニタリング
全身の管理が必要な方に対しては、自動血圧計、パルスオキシメーター、心電計モニターなどを使用し、全身の状態を確認しながら安全に治療が進められるように配慮します。
緊急時に備えた医療設備
降圧剤、昇圧剤、抗不整脈薬、ステロイド剤などの救急薬剤やAED(自動体外式除細動器)、救急蘇生用医療器材を常備し、緊急時に備えた体制を整えています。
全身管理に精通した歯科医師による治療
全身状態が悪い方や重症度の疾患を有する方の治療は、全身管理のトレーニングを受けた歯科医師(口腔外科専門医や歯科麻酔認定医)が担当します。
| 循環器疾患 | 高血圧症/狭心症/心筋梗塞/心臓弁膜症/不整脈/感染性心内膜炎/先天性心疾患/心不全/大動脈瘤/心臓ペースメーカー/植え込み型除細動器(ICD) |
|---|---|
| 代謝・内分泌系疾患 | 糖尿病/甲状腺機能亢進症・低下症/クッシング・アジソン病 |
| 呼吸器疾患 | 喘息/慢性閉塞性肺疾患/誤嚥性肺炎 |
| 腎・泌尿器系疾患 | 前立腺がん、人工透析/慢性腎不全/腎機能障害 |
| 消化器疾患 | 肝炎/肝硬変 |
| 婦人科系疾患 | 乳がん、子宮筋腫/更年期障害 |
| 精神科・心療内科系疾患 | 自律神経失調症/うつ病/パニック障害/自閉症/統合失調症 |
| 整形外科疾患 | 骨粗鬆症/脊柱管狭窄症/椎間板ヘルニア |
| 脳神経外科系疾患 | 脳出血・脳梗塞/くも膜下出血/パーキンソン病/てんかん |
| 自己免疫疾患 | 関節リウマチ/全身性エリテマトーデス |
この他、すべてのがん治療(抗がん剤治療や放射線治療を受けている方、受けたことがある方)、アレルギー疾患、出血性素因(血出しやすい、血が止まりにくい)なども対象となります。
患者さんの全身状態を確認し、それぞれに合った歯科治療を提案させていただきます。
※なお、コントロールの不良や病態が重症で、当院での治療が困難と判断した場合、高度医療機関を紹介させていただきます。
どのような疾患であっても一番大切なことは、安心・安全に歯科治療ができるということです。リラックスして治療を受けることも大事です。それにはまず、患者さん特有の病気の状態や症状をしっかり把握していなければなりません。
私たちは問診票や問診で、患者さんの全身状態を確認しています。既往歴、現病歴、服用薬剤の有無、通院されている病院名、生活状態などについておたずねします。その際にお薬手帳は大変貴重な情報源ですので、受診される際は必ずご持参ください(持病の経過の確認や状況が把握できない場合は、かかりつけ医院に対診して確認することがあります)。
また、来院後に体調や気分が悪くなった時は、速やかにお申し出ください。状態によって治療内容を変更したり、延期したりすることもあります。
Q.持病の服薬を続けたまま治療を受けても大丈夫でしょうか?
A.
まずは全身状態や飲んでいるお薬の確認を行い、必要に応じてかかりつけ医師と連絡を取ったうえで治療を行います。糖尿病や心臓に持病がある方は治療前に抗菌剤を処方し服薬していただいたうえで治療を行うことが多いです。また、透析中の腎臓病の方は治療日と透析日の調整や透析に使用するお薬の調整をかかりつけ医に依頼したうえで治療を行うこともありますので、自己判断でお薬を止めて受診することはおひかえください。
Q.心疾患や糖尿病があっても、安全に歯科治療を受けられますか?
A.
安全に治療を受けていただくことを第一に治療の計画を立てます。重症の心疾患の方などは、主治医と連携の上、治療方法や、開始時期を判断し治療を計画します。
また、糖尿病をはじめ、持病をお持ちの方は、治療のリスクを診断するため検査結果や糖尿病手帳、ペースメーカー手帳などをお持ちの際にはご持参お願いいたします。
Q.予約時に伝えるべき病歴や検査データはありますか?
A.
初診時の診察時間が必要な場合もありますので病名をお伝えください。
安全だけではなく、お体の状態に合わせた配慮をしますので、初診受診時に病歴のご申告をお願いします。
一見歯医者とは関係ないと思われるアレルギーの治療やその他輸入薬、市販薬の服用がある方も治療時の合併症を引き起こすお薬や飲み合わせの悪いお薬もありますのでご申告お願いします。
Q.治療前に主治医との連携はどのように行われますか?
A.
医療情報には多くの個人情報が含まれるため、基本的には文書による情報の授受を行います。かかりつけ医の診療研番号がわかる方は文書の郵送も行いますが、郵便による情報漏洩が心配な方、自宅近隣にかかりつけ医がある方などはお手紙を持参いただくことも可能です。
Q.血液をサラサラにする薬を飲んでいますが、抜歯や外科処置は可能でしょうか?
A.
血液をサラサラにする薬(抗血栓症薬)にもいくつかの種類があり、服薬したままで治療が可能なものと、そうでないものがあります。また、お薬を休止するかどうかは治療内容によっても変わります。
治療の可否は、持病の状況によっても変わりますのでまずはご相談ください。
TOP